2014-11-10から1日間の記事一覧

序.

東方儚月抄とは何を描いた物語だったのでしょうか。 ひょっこり出てきた問いから、やけに長いものを書いてしまいました。照れ隠しに、注意書きを少しのせておきます。 目標はさんざん語られてきただろう儚月抄という存在に、少しでも新鮮さを感じてもらうこ…

Ⅰ. 考える葦とその相手 : 地上の民vs.宇宙と高貴な神々の力(儚い存在vs.絶対的存在)

視点1:儚い地上の者達と絶対的存在をともに讃える世界観 要約:儚い地上の者達の挑戦と未知の宇宙のロマン、あるいは儚い地上の者達の挑戦と神々の力を比較したとき、儚月抄の世界観にとってはどちらも重いものなので、片方の完全な勝利はない。したがって…

Ⅱ-ⅰ.地上の民と穢れの少ない草原 : 生物の進化と文明の歴史vs.穢れの概念

A. 死を内包する理想と死を忌避する理想の折衷 ― 吞んべぇのレムリア(retro ver.)*1 視点2:死を内包する地上の生命観・歴史観と、死を忌避する月の死生観を折衷する 要約:儚月抄の世界観にとっては、多様な生物の間の生存競争がもたらした生命の歴史・…

Ⅱ-ⅱ .地上の民と穢れの少ない草原 : 死ぬべき定めの儚い存在vs.いつか死ぬこと

B. 死の不平等と生きること 視点3:生きることを死なないことに勝たせる 要約:仮に理想郷を構想するとしても、地上の民が「いつか死ぬこと」から逃れられるわけではない。それでも、地上の民の生が不死の存在に及ばないわけではない。儚い存在の活路は、「…

Ⅱ-ⅲ .地上の民と穢れの少ない草原 : 個の視点vs.社会の視点

C. 平衡状態を保つ方法 視点2と視点3の接続:個の視点vs.社会の視点 要約:理想郷が生物多様性のバランスを活かすためには、人妖はそれぞれの役割を果たす必要がある。この点で、社会に参加することは互いに義務を果たすことで環境をつくり出すことでもあ…

Ⅱ-iv.地上の民と穢れの少ない草原 : まとめ

D. 永琳と月の酒 毒を渡すもっとも良い方法は贈り物にすることです。物語の酒宴において酒にどんな意図が込められているかは、飲んでみるまでわかりません。*1 紫いわく“「失礼ね。毒なんて入ってないわ」これはどうやら紫のギャグらしい。”(p182) 永琳が酒…

Ⅲ. 東方の世界は何を願うのか

A. 命名決闘の誕生 大結界により幻想郷が隔離された生態系となった後、妖怪は人間にうかつに手を出せなくなりました。生態系は、外来種などによってそのバランスが乱れる攪乱と呼ばれる出来事の後、平衡の形態を変化させることがあります。幻想郷における攪…

Ⅲ.

D. 付録 最後にいくつかの仮説を出して終わります。考えは生き物のように変わります。いずれ削除する予定の、暫定的なものです。(反応をみると消すに消せない2014年末) □永遠の二項対立? ここまで見てきたように、儚月抄には二項対立的視点で説明できる要…

End. 『境界を侵犯すること』

(外部からきてしまった場合には、先頭から読むことを推奨します。: http://lw.hateblo.jp/entry/2014/11/10/013238) なんで儚月抄について書いたかって?そりゃあもちろん。 [MAIN MENU] 青の宴と二つの望郷 ほか 吸血鬼を載せた三段ロケットが月に行き、…